Vol.7
疲労を抜く
RUNNERS COLUMN

気力だけでは生身の体は
いつしか破綻します

ロードレースシーズンに入り、毎週のように各地でレースが開催されています。1カ月1本の大会参加は当たり前、2週間に1本くらいの間隔でレースに出場されている方も少なくありません。フルマラソンは4月あたりまで各地で開催されます。まだしばらくシーズンは続く長期決戦です。

気力だけでは生身の体はいつしか破綻します。この先何年もランニングライフを楽しむためには、緊張の糸をゆるめる期間を敢えて儲けるような配慮が不可欠です。上手にご自身のコンディションをマネージメントしていかなくてはなりません。
今回のテーマは「疲労を抜く」です。単に練習を休んで疲労を抜くのではなく、積極的に体を動かしながら疲労を取り除いていく。そんなアドバイスになります。

「疲れを抜くには、ゆっくりペースでジョギング」
は正解? 誤解?

「疲れを抜くには、ゆっくりペースでジョギング」そう思っている方がたくさんいらっしゃいます。半分は正解ですが、半分は少し誤解しています。
実は、疲れ方にはタイプがあります。そのタイプを見極めた上で、どんなトレーニングをすれば疲労が効率よく抜けて行くのかを決めていくことがポイントとなります。
仕事の疲れを抜くには「歌でも歌って発散する」活発な方法と「静かに横になって体を休ませる」静的な方法との2通りがあると思います。ランニングも似ていて2タイプがあると思ってください。『わりと活発なトレーニング』と『静的なトレーニング』そんな2通りの使い分けになります。

「筋肉の疲労」→ L.S.D.
(静的:ゆったり長時間持続運動)

レースや激しく追い込んで走った後の筋肉疲労。どこの部位の筋肉が張っているなど、具体的に指で指せるような疲労感です。スピードを上げて走る高負荷トレーニングにより筋肉が激しく伸縮したことで筋繊維が摩耗しています。筋肉が凝り固まりツッパリ感が伴った状態です。こういった疲労に対して処方すべき練習はL.S.D.(ロング スロー ディスタンス)という練習が好ましいのです。小さな動きで筋肉の伸縮を長時間繰り返します。筋肉のポンプ作用で各所に蓄積していた疲労物質が徐々に拡散します。走り出しは突っ張っていた筋肉が、しばらくするとほぐれてきます。

(例)80~120分L.S.D. [;Long Slow Distance]
1Kを8.00~9.00くらいのペースで走り続けます。歩幅をいつもより狭めて、小さな歯車を回転させるようなイメージでトコトコ走り続けます。途中でストレッチを挟むのも良いでしょう。ビギナーの方でしたらウォーキングでも構いません。また走る路面は、舗装された道ばかりではなく、公園の淵とか、田んぼのあぜ道のような未舗装の路面で走ると、でこぼこ不安定な路面に足が対応しながら走るので様々な筋肉に刺激が入り疲労が抜けやすくなります。
「足がよろこぶのが分かる」などと表現するランナーもいます。

※筋疲労時には、脚が火照った状態が続くことがあります。触ってみると他の部位よりも熱を持っている状況です。火照りとは、修復のために血液が組織へ集まり炎症したような状態です。多くの方は、ランニングと並行して、日常の立ち仕事や座り仕事で、重力によって足先やふくらはぎにそんな血液が溜まり戻りにくくなり、うっ血したような状況になりがちです。足が浮腫んでしまうのはそんな理由が大きいようです。こうした状況を放置しておくことは疲労回復が遅れるので好ましくありません。アイシングにより元通りの体温に戻してあげることが理想ですが、仕事中にはそういったゆとりはないでしょう。

マクダビッドのアクティブリカバリータイツ(品番:8810)は、適度な段階着圧でふくらはぎのポンプ作用と体温コントロールでカバーしてくれます。

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脚絆(きゃはん)

昔の飛脚の方の格好を見ると、下腿(すね・ふくらはぎ)には「脚絆」というスタイルで脚を圧迫しています。
アクティブリカバリータイツ(品番:8810)」や「コンフォートスリーブ(品番:8836)」と考え方が似て、長旅の疲労を蓄積させない工夫だったのではないかと思っています。

「慢性疲労・グッタリ感」→ 軽めのインターバル
(活発・心地よい範囲で呼吸を上げる)

日々の走り込みによって蓄積した疲労です。体の奥の方までぐったりとした重苦しさ。走っていてもなかなか抜けてくれません。こちらの疲労感は具体的に「どこが疲れている」と指せるものではありません。何となく体がだるかったり、心地よく走れないといった鈍い疲労です。
実はこういったタイプの疲労の回復として、L.S.D.などのゆっくりランニングは効果的ではありません。むしろ疲労感が増してしまいます。体がますます鈍くなり、速い動きに戻れなくなりかねません。

こんな時には、適度なスピードでインターバル走に取り組みます。心地よく戯れるように走るので、「スピードプレイ」などと呼ばれたりもします。タイムを気にせず、心地よい範囲で呼吸を上げて追い込みます。激しい筋肉の伸縮と血流によって活性化されます。澱んで何かつっかえていたものが吹き飛ぶようなイメージです。自分の好みで、負担なく走れる距離を複数本。力まずに追い込むような走り方をしてみましょう。

(例) 15~30分ジョギング+【いずれか選択】

  • ・00~300M×5~10 (つなぎ100Mゆっくりラン)
  • ・「1分間ペースアップ⇔1分間ゆっくりラン」×5~10 タイムを気にしない。ゆとりあるペースから入り、本数を追うに連れて尻上がりにスピードが上がってくる走り方が好ましい。

これらの練習は、力ずくではなく、リラックスしたフォームで取り組む必要があります。 走り込みや連戦によって体の芯の方まで疲れが溜まってきます。レースが続くと、心身ともに枯渇してきたような状況に陥ることがあります。そんな感じがするランナーには、緊張を解いて楽しみながら走る「放牧期」を敢えて取り入れるようアドバイスしています。連戦の疲れは数日休んだだけで抜け切りません。練習メニューだけではなく栄養面からもいたわってあげる必要があります。それから、どこかをかばって走ったり、バランスが崩れたフォームで疲労抜きを目的に走ったりしていては、その効能がどれほどあるのか? よくわかりません。

あるトレーナーさんの説明によると、人間の体幹を上から見ると前後左右を筒のように筋肉が取り巻いていますが、それらがランニングによる内蔵の上下動を守ろうという防御反応でカチコチに固まってしまうことがあるようです。そうなってしまうとツイスト運動、骨盤の滑らかな回旋が妨害され、脚だけに頼って走ろうとするフォームに陥りがちです。当然スピードは出ませんし、心地良さがないはずです。そんな疲れを拭うために、今回は部屋で寝そべって取り組むような種目を紹介します。ストレッチやエクササイズで体幹をほぐしてみると良いでしょう。

動画で見る!
疲労を抜くストレッチ&エクササイズ

1. 体幹ツイスト

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真っ直ぐに仰向けに寝る。
片足を真上に上げてから内側にひねる。
→静止20秒
→自転車のペダルをこぐような動きで膝をゆっくり上下に動かす
背中・腰・臀部のストレッチ

2. 臀部ストレッチ

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片足は体の前に、膝関節90度。 もう片方の足は横に。
体幹の四角形(両肩・両骨盤)が捻れないように気をつけて、背筋真っ直ぐを整えたまま体を前面に倒す。
→静止20秒(左右各)

3. 体幹アーチ

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四つん這いになる。
1.息を吐きながら体を丸め込む。お臍をへこませる。視線はお臍を見る。トンネルのアーチを作るイメージ。(静止20秒)
2.息を吸いながら背筋をのけぞらせる。骨盤は前傾。顔を上げ視線はできる限り上。空を見る。吊り橋のアーチを作るイメージ(静止20秒)
「1+2」を3~5セット。ゆったりとした深い呼吸を続ける。

4. 両脚ワイパー

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両足を揃えて膝関節90度で大腿を持ち上げる。
背中は床にフィット下状態を保ち、骨盤から下が左右へねじれる様に。
1234(右へ)・5678(左へ)のリズムで右に左に大腿部をスウィング。車のワイパーのような動き。
カクカクせずになめらかにスウィングする。 (ゆっくり5~10往復)
→発展系、膝関節を伸ばして、振り子を長くして同様。 (ゆっくり5~10往復)