Vol.8 リラックスして走る

松井祥文コーチ ランニングコーチ レースシーズンが始まるまでに走り込みに負けない強い脚をつくり上げよう

(2016.1.22)

フルマラソンに向けた実践練習

私が指導しているニッポンランナーズでは日々のトレーニングでメンバーのフォームを見ています。
練習中はラップを読むこともありますけど、もっとも大切にしている役割は、フォームアドバイスです。

例えば、道路で取り組む1Kインターバルや5Kのペース走など。スタート後はそれぞれのランナーが自分でペースを組み立てて走ります。私は集団の先頭でスタートします。そこからスピードを落とし、追い越されながら集団の後ろの方に下がっていきます。抜かれる際にいっしょに併走しながら個々の走りをチェックするのです。
「肩の力みを取りましょう」とか「深く息を吐いてください」などといったアドバイスをすると、それまでよりも皆さん楽に前に進むランニングフォームに変わってきます。

「頑張れ」というフレーズはまずありません。

「エネルギーの無駄遣い」そんな人が圧倒的に多いのが現状

一般的に、ほとんどのランナーにとって努力不足・力の出し惜しみのようなニュアンスは当てはまらないと感じています(むしろ頑張りすぎ)。
「頑張らねば」という気力ばかりが先行して、力が噛み合っていない。言わばエネルギーを無駄遣いしている。そんな人が圧倒的に多いのが現状です。そこにコーチが何らかのキーワードを投げかけることで、効率良い走りに修正されるのです。
ですので、エネルギーを上手に利用し前へ体を移動させるために、「リラックス」というフレーズは本当によく使います。

そうはいうものの、身近に自分のフォームをコーチに見てもらえるランナーは多くはありません。雑誌で組まれる特集などでも、動画でセルフチェックする為のポイントについてよく相談されます。
ですので、今回はセルフチェックに役立てていただくべくフォームを撮影しました。

★OKとNGの違いを見極めてください。
★フォーム映像をイメージに焼き付けて走ってください。


練習中にガラス越しを走る際などご自身でチェックしてみてください。ランニング仲間がいるようでしたら、お互いにムービーで撮影して、ゆっくりと映像を確認してみるのもよいでしょう。SNSのメッセージを使えば、簡単に動画を交換できる時代ですから、離れた友人ともやりとりができるのではないでしょうか?

動画で見る! セルフチェック!

【1】肩甲骨の動き×骨盤の動き

 

動画を繰り返し何回も見てください。
人が走る時、エネルギーを生み出す原点は背骨です。

[参考]魚が泳ぐ姿、馬が走る姿、トカゲ、どの動物も背骨(脊椎)を巧みに使って体を移動させます。赤ちゃんのハイハイもそうです。
腕振りの手順としては、はじめに①上体で背骨をスウィングさせます。でんでん太鼓の柄を振るような動きです。【第3回「こけし走り」動画参照】

その動きを助長させるためには、②肩甲骨を引くように腕をスウィングするのです。(腕を振るために腕を振るのではなく、背骨をスウィングさせるために腕が振れてしまうとも言えます。)
③そうするとそのエネルギーが下半身へ伝達されます。脚の付け根である骨盤がスウィングします。④そして左右の脚が交互に振れるというメカニズムです。

この「スウィング」とは単なる横方向だけのネジレではありません。自転車のペダルを右左それぞれ回すような縦方向の円運動も加わります。肩甲骨と鎖骨とが右左固まることなくスウィングするのです。左右の骨盤もそのようにスウィングして脚運びにつながるのです。
⑤まるでハンガーのように左右の肩を力ませて肩を支点に腕を振る方が多くいます。中心から離れた2つの支点で腕を振っていて、足運びにはエネルギーが伝わりません。
⑥リラックスして、体の中心軸から動きを生み出せるようにしましょう。




【2】視野のチェック

骨盤・肩甲骨がやわらかく動いても、背骨が歪んでいたら力はうまくかみ合いません。
呼吸が苦しくなってきた時、例えば、坂の頂上、前のランナー、遠くの目標物などを見すぎていませんか?

これは「視力検査」の際、片目を覆い隠し、目を細めて前を凝視しようと顎が出てしまう姿勢に似ています。こんな姿勢になっていないでしょうか?

体の前側は縮こまった状態です。こうした姿勢では深く息が吐けません。呼吸換気が浅く二酸化炭素を排出できないということです。鎖骨と肩とをこわばらせて首筋で呼吸している。そんな走り方に陥ります。 駅伝で出遅れたチームがなかなかリズムをつかみ直せず、力を発揮できないのは、少なからずこういった視野が関係しているのではないかと思っています。
初めから1人で組み立てるレースと違って、前の走者からタスキを受け取った順位でスタートするためです。受け取った瞬間に遅れを取った前のチームを追おうとするのは、駅伝選手として当然の心理ですが、普段とはほんのわずかなバランスの違いだとしても、力が空回りしてしまうのではないかと考えます。




【3】息を吐く

レースやスピードを上げて走る練習の時には、深い呼吸を重視すると思いますが、このような高負荷練習だけではなく日頃のゆっくりジョギングの際にも同様に意識してください。おしゃべりに夢中になって浅い呼吸になっていたりしがちです。ランニング中だけではなく、生活全般で呼吸が浅くなっていないか?を省みる習慣を入れたいものです。
パソコンや細かい手作業では目を凝視します。その際に呼吸がものすごく浅くなっているからです。

走っていて5分おきを目安に両方を下げながら息を吐く。そんな習慣です。肺に残っている空気をすべて出し切るような深い換気を何回か取り入れてみましょう。固くなりかけたフォームがリセットされて、リラックスが生まれます。そして、この習慣を続けることで、その時だけではなく、常時リラックスしたランニングフォームが身についたランナーへと進化するのです。
私の話になりますが、12月の福岡国際マラソンで2時間34分32秒という記録で走ることができました。41歳になりますが、今でも走りの技術が向上していると実感しています。
クラブでは、練習を見ている私とすれ違いざまに「肩はリラックスできていますか?」 などと自ら確認してきたりします。みなさん徐々に良い方向にフォームが進化してきます。




【4】足運び

「足を前に」とか「腿上げ」の意識が強すぎるとよくありません。一瞬はペースを上げることができるのですが、そのスピードを持続させることは困難です。
ここ数年、特に中高年のランナーの方の背骨から腰にかけての故障をよく耳にするようになってきました。 動画のように足を前に出しすぎると、接地時に強いブレーキがかかります。伸びきった脚を伝って膝、腰へと強い衝撃として返ってくるのです。 その蓄積で体が参ってしまうことがないようにしてください。思い当たる方は、次のように修正しましょう。

①正しく立つ。《耳・肩・骨盤・くるぶし》のラインを一直線で結ぶようなシルエット。
②体を前に崩す。

片足が自然と前に出る。前に出た足を体の真下に置く意識で着地する。反対足が前に出る。その足を体の真下に置く意識で着地する。
この繰り返しです。過剰に足を前に振りだそうとしないことです。普段から脚の先端が「踵」ではなく「ゆびさき」という感覚を持つとよいでしょう。

下の図も参考にしてみて、より身体に負担の無い足運びを心がけてください。

 
  
 
  

以上で「美走FACTORY」は終了です。
8回にわたり、ご愛読ありがとうございました。
齊藤 太郎


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