Vol.1
走るって、
どういう運動?
RUNNERS COLUMN

みなさんは “走ること” “歩くこと” とは
どんな運動だと認識されていますか

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「重力と付き合いながら、自分の体重を運搬する運動」と私は捉えています。

現在私が定期的に継続指導をさせていただいているのは、ニッポンランナーズの在籍メンバー(小学生から80歳代の方まで)約300名。東京体育館RCメンバー60名。日本サッカー協会のレフェリー、日本ラグビーフットボール協会のレフェリーなど他競技関係者の方々へのランニングや体さばき。最近ではスケルトンの選手にも加速の指導をしております。 また、介護予防教室では、いつまでも自身の足で歩いて生活できるようにという目的で指導させていただいています。
目的とするポイントへ自体重を自らの足で運ぶということ、重力とうまく付き合うという運動の本質は全て共通しています。

ですが…

やみくもに筋力をアップさせれば良い
ということではありません。

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例えば、ロボットを上手に歩けるように開発する過程で、パワーアップから始めるでしょうか?答えはNOです。動きのメカニズムを追究した上でその改善を図る手順を踏むはずです。

ウォーキングは左右どちらかの足が地面に接して進んでいきます。一方でランニングは、両方の足が地面から離れる瞬間があります。体が「空中に浮いては落ちる」を繰り返す運動なのです。そして、一歩の着地衝撃は、おおよそ体重の3倍と言われます。これが42.195KMに渡って繰り返されます。エリートランナーで約2万5千歩。以降は徐々に歩数が増えていき、4時間で4万歩。5時間で5万歩のようなデータになるようです。
体重の3倍の衝撃を敵と捉えるのか?むしろ味方として利用する走り方ができるのか?が大きな分かれ道となります。

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【A】 効率の良い走り方

着地時にしっかりと支えきれる人の力の使い方は、公式テニスボールのようなイメージです。圧力が高いために、体が沈むことはありません。速い反発(接地時間は短い)で着地衝撃を、体を前へ進ませる力に変換できます。

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【B】 効率の悪い走り方

着地時に支えきれない人の力の使い方は、空気の抜けたボールのようなイメージです。一旦沈んで潰れます。そのあとで地面を蹴ることで進むことになります。

例えば、膝や腰の位置が落ちていて、体全体が歪んだような写真をよく撮られる人は、【B】の走り方の可能性が高いのです。体が沈んでしまう分、接地時間(片足で地面を捉えている時間)が長くなります。

苦しい時、レースの終盤、キャリアの浅い方は特に、脚を前に出そうとか、膝を上げようとか意識しがちですが、これは意識の矢印(→)が「上」に向いているので、力の無駄遣いに陥っています。向けるべき方向が逆なのです。体の真下で着地すること。 地面をしっかり捉えること。むしろ「下」に意識の矢印を向けて見てください。着地した足にどれだけ体重を乗せ切れるかどうか? それが着地衝撃を前への推進力に変換できる効率の良い走り方です。基本の「き」のアドバイスです。

残念なことに、この基本の部分をあやふやなまま走り出す方が多いのが現状です。はじめは「できない」から「できる」へと進展する水泳などのスポーツは、はじめに必ず基本をしっかり学びます。一方でランニングは、はじめから誰でも「できてしまう」スポーツなので、大切な基本があるにも関わらず疎かにされがちなのです。そして、ケガ等が原因で走れなくなって初めて、基本の大切さに気づいたりする流れがとても多いのです。

【B】の方は【A】との違いが解決されないまま、トレーニングをつんだとしても、記録が頭打ちになったり、故障が繰り返されるようなことに陥りがちです。パソコンに例えると、効率の悪いOSでひたすら作業をするようなものです。

このコラム名を「美走FACTOY」と名付けさせていただいた背景には、皆さんにいつまでも美しいランニングフォームで走り続けていただきたい気持ちがあります。いつも基本に目を向けて走ってください。

今回は体の真下で地面をとらえる為のエクササイズを3つ紹介します。走る前、またはジョギングの間に複数回挟む形で取り組んでみてください。

体の真下で地面をとらえる為のエクササイズ

1.スクワット(両足)〔20回〕

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  • ・視線を前に(下を向かない)
  • ・股関節を折りたたむような意識で腰を落とし、持ち上げる

2.片足スクワット 〔左右各10回〕

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  • ・体が正面を向いたままねじれないようキープ
  • ・姿勢が崩れないように気をつける
  • ・お尻周りの筋肉でしっかり支える

3.軸づくり 〔左右各10秒〕

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  • ・支えている足と同じ側の腕を挙上