ボディコーディネーション コラム
Vol.3ヒ ザ
BODY COORDINATION
COLUMN

膝は「かわいそうな関節」?

膝は一見単純な動きをしているように見えて、実は非常に複雑な動きをしている関節です。しかも膝の上下の関節、すなわち股関節と足関節の動きに影響を受ける、いわば間に挟まれた「かわいそうな関節」でもあります。

膝の怪我、障害が体全体に与える影響は計りしれません。膝の状態を把握することは快適なスポーツライフにとって大変重要になってきます。 そのためにまずは膝そのものがどういうものかを知ることはとてもよいことだと思います。膝の構造、動きを理解することによって、なぜその動きがいけないのか、どういう動きならよいのかがよりわかるようになると思います。また様々な問題に対して、病院に行くべきか、サポーターが必要なのか、テーピングが必要なのかなどの対策もたてやすくなるのではないでしょうか。

今回のコラムでは、まず膝の構造や機能をご紹介します。そして人間が歩く時、動く時の膝の動きなどを紹介します。その後によく起こる膝の障害、怪我などをご紹介したあとに、対策などもご紹介していきます。

膝関節の構造

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膝は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)と膝蓋骨(お皿)からなる関節です。大腿骨と脛骨の間には半月板というクッションの役目になっている組織が存在します。膝周囲の筋肉は、前側は大腿四頭筋という4つの筋肉群があり、膝蓋骨を介して膝蓋靭帯となり、最後は脛骨に付着します。

大腿四頭筋は、3つは大腿骨に付着しますが、大腿直筋だけは大腿骨に付着せず骨盤(下前腸骨棘)に付着します。またそのすぐ上側から膝の内側にかけて縫工筋という筋肉があります。膝(太もも)の後部にはハムストリングスと呼ばれる3つの筋肉群があります。また膝裏には斜めに横切る膝窩筋という筋肉やふくらはぎの筋肉である腓腹筋が膝の裏側に付着します。

膝周囲の靭帯には、代表的なものが4本あります。内側側副靭帯と外側側副靭帯という内側と外側を守っている靭帯と、大腿骨と脛骨を繋ぐ前十字靭帯と後十字靭帯です。この他にも細かい靭帯が存在して、膝の動きと機能を守っています。

大腿骨の関節面は関節軟骨でコーティングされていて、半月板の上をうまく滑るようにできています。またお皿である膝蓋骨の裏面も同様に関節軟骨によって守られています。

膝関節の動き

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膝関節は曲げる(屈曲)と伸ばす(伸展)動きしかないと思われがちですが、実は膝の曲げ伸ばしの際には脛骨と大腿骨とそれぞれが捻られる回旋の動きや、脛骨の前後の動きも必ず伴います。

立った状態で膝を曲げる時には、まず大腿骨の先が転がるようにして曲がりつつ、半月板の上を前方に滑ります。それと同時に脛骨の内旋も起きます。また膝が伸びる時には大腿骨の先が同じく転がるようにして伸びつつ、半月板上を後方に滑ります。またこの時には大腿骨の内旋が同時に起こります。

そもそも半月板は、関節の接地面を増加させることによって力を分散するような重要な役割を担います。これによって関節面の摩擦を減らし衝撃吸収ができるので、非常に重要な組織です。

膝の靭帯もそれぞれ膝の動きに重要な役割を担っています。内側側副靭帯は外側からのストレス(外反ストレス)に抵抗して膝を守りますが、膝がやや屈曲位で他の組織があまり働いていない時に、特に外反ストレスに抵抗する重要な役割を担っていて膝が伸展した時に硬くなります。外側側副靭帯は内側からのストレス(内反ストレス)に抵抗します。

大腿骨と脛骨の間を結ぶ前十字靭帯は、脛骨が前に動くのを抑える働きをしているのにたいして、後十字靭帯は脛骨が後方へ動くのを抑える働きをしています。 前十字靭帯はハムストリングスと協力して、また後十字靭帯は膝窩筋と協力して働きながら膝の機能的な動きを維持しています。

歩行時の膝の動き

以上が膝だけを見た時の動きでしたが、非常に複雑でわかりにくいものです。むしろ、より身近でより重要なことは運動した時に膝関節やその周囲の筋肉がどう動いているかでしょう。

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人が歩く時、前に出した足が地面に着いた瞬間に膝は曲がります。この時脛骨は同時に内旋します。足部のコラムでもご紹介しましたが、足部がプロネーションを起こす(内側アーチが下がる動き)時には脛骨の内旋を伴います。大腿四頭筋が収縮しながらも伸ばされるということをしながら地面からの衝撃を吸収しようとしているのです。

また股関節のコラムでもご紹介しましたが、大腿骨も同様に内旋するようになっています。この時膝には外側からのストレス(外反ストレス)がかかりますが、元々備わった動きなのであまり心配はいりません。大腿四頭筋が強く収縮するために脛骨を前方に引っ張ろうとしますが、前十字靭帯やハムストリングスがしっかりと抑えてくれています。膝関節は曲がりながら脛骨が内旋しますが、半月板があるおかげで膝の安定性は保たれています。

体が前に移動して体重が足部に乗ってくるにしたがって膝関節も伸びてきます。膝が伸びるにしたがって脛骨の内旋も元に戻ってきますが、これも膝周囲の靭帯や半月板のなどのおかげで円滑に行われます。またこの時は片足体重になっていて、体の重心がより外側へ移動していきますが、股関節外側の中臀筋や腸脛靭帯が働いて外側を守ってくれています。

最後の蹴り出しの時に、足首が底屈するのと同時に膝も曲がります。これはふくらはぎの腓腹筋が収縮するためと、股関節の上と膝の内側に付着する縫工筋の収縮によるものです。

スクワット動作での膝の動き

人が階段を登ったり、しゃがんだりする時の膝の動きでも膝関節の動きそのものは同じです。しかし膝の周囲の筋肉群の働きや他の関節との連携が変わってくるのです。

スクワット動作でしゃがむ時は、重心をよい位置に維持するためにお尻を後ろに引きます。その後に膝が曲がってきてしゃがみこむことになります。この時大腿四頭筋が、膝が曲がるのをコントロールするために縮みながらも伸ばされるという伸張性収縮を起こします。同時に股関節も曲がりますが、大臀筋も伸張性収縮を起こしながら股関節の曲がりをコントロールしています。こうして上体が前に倒れないようにしながらしゃがんでいるのです。しゃがんだ姿勢から立ち上がる時は、逆に膝は伸展しながら股関節も伸展していきます。

膝の障害と怪我

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膝は曲げ伸ばしの他に回旋と滑りを伴う複雑な関節のため、痛めやすい関節でもあります。
まずは病院を受診して股関節に問題がないか診断を受けるべきです。
股関節は歩く時で体重の5/6を支えることもあるので、骨や軟骨、靭帯に損傷がないかどうか把握することが重要です。
問題がなければ、体の機能を取り戻すために何かをすることになります。それが硬くなったところを緩めることなのか、緩んだところを締めることなのか、専門家に診てもらうとよいでしょう。

関連する怪我の症状

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靱帯損傷

転倒したり人と衝突したりして膝の関節を捻挫してしまい、靭帯を損傷することもありますが、スポーツ中に急な減速やカッティング動作で方向転換をしようとした時に前十字靭帯を損傷してしまうこともあります。前十字靭帯に関して言えば、むしろこちらのほうが多いようです。

膝関節の構造や動きのところでご説明したように、この場合は半月板も痛めている可能性があるので、必ず近くの整形外科(接骨院や整骨院でなく)を受診したほうがよいでしょう。場合によっては手術を必要とする場合があります。

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膝蓋腱炎(しつがいけんえん)・オスグッドシュラッター病

一方、上記のような急な怪我ではないものの、スクワット動作の多いテニスやサッカー、バスケットボールなどでは、膝のお皿の下が痛くなる膝蓋腱炎やオスグッドシュラッター病という障害があります。

これは股関節をあまり曲げずに膝ばかりを使ってスクワット動作をしているせいで、膝蓋靭帯や膝蓋靭帯が付着する脛骨にストレスがかかりすぎて起こる障害です。単純に運動のしすぎでもなりえます。
この場合は休むだけでなく、正しいスクワット動作を身につける必要があります。

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腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)

ランニング愛好家の中では、膝の外側が痛くなる腸脛靭帯炎というのも起こりやすい障害のひとつです。
これは、ランニング時はそもそも膝の外側にストレスがかかりやすいことと腸脛靭帯が外側を支えるという機能を果たしているからこそなる障害でもあります。
骨盤周囲に問題があり、股関節が正しく機能していない場合に起こることもありますし、足部に問題があって常に足部の外側に体重がかかっていることが多い場合などでも起こることがあります。
この場合は患部の炎症を取り除くという対症療法的な処置だけでなく、股関節と足部の問題も解決しなければなりません。

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鵞足炎(がそくえん)

膝の外側でなく内側が痛くなる場合もあります。まさに大腿骨と脛骨の境目が痛くなることもありますし、関節よりやや下の前側のところが痛くなることもあります。

この下側が痛くなる障害を鵞足炎といい、縫工筋、薄筋、半腱様筋が付着するところの炎症です。

これも同様に患部の炎症を取り除くという対症療法的な処置だけでなく、股関節と足部の問題も解決しなければなりません。

関節軟骨の劣化

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高齢になってくると膝の関節の軟骨が劣化してきて炎症が起こることがあります。場合によっては変形してくる場合もあります。特にスポーツで膝の十字靭帯や半月板を損傷した経験がある方は早期になりやすいとも言われています。

この場合は必ず病院を受診して、ご自分の膝の状態がどうなのかを把握することが大切です。軟骨の劣化が激しい場合は手術が必要になる場合があります。

手術をすぐにするべきか、できるだけ最終手段としてとっておいて、別の治療法を試すべきかどうかは議論があるところですので、不安のある方は、どんな選択肢が残されているか、その治療法の効果はどれくらいか、費用対効果はどれほどかなど、納得のいくまで医師と相談されることをお勧めします。

市販のインソールや治療院などで作成されるインソールだけで解決する可能性はほとんどなく、必ず運動療法が必要となると思いますので、まずは病院で診察を受けるところから始めてください。

膝を鍛えるための簡単なエクササイズ

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膝を鍛えるというより、足腰を鍛えるのにもっともふさわしいエクササイズといえば、やはりスクワットと言えるでしょう。筋力が鍛えられるだけでなく、骨にストレスもかかるため骨も強くなりますし、バランスも鍛えられます。

しかしスクワットは正しい膝の使い方をしないと先ほど説明したような障害につながる可能性も高くなってしまいます。
それではどのようにすれば安全に簡単にスクワット動作が身につくのか。それはいすから立ち上がることと座ることを繰り返すことです。いすに座る時は必ず上体を前に倒して股関節を曲げてから膝を曲げることができます。いすに座ろうとする時に膝を先に曲げる人はまずいないと思います。

それ以外にはお相撲さんのように四股をふむこともよいでしょう。時間がとれない方には駅の階段を一段抜かしで登っていくのもお勧めです。片足でスクワットするようなものなので、ついでにエクササイズもできてカロリー消費もできます。

正しいスクワットが身につくと、膝にくるというよりは膝上の太ももに効く感じがすると思います。膝のお皿にストレスがくる場合は膝から曲がってしまっている可能性が高いです。

インソールやサポーターなどについて

ランニングや運動をしていて疲れやすい、時々痛む程度であれば病院を受診せずにサポーターなどを利用すればよいのではないかと考える方もいらっしゃるでしょう。ここではサポーターなどの利用に関してのアドバイスをしたいと思います。

まず膝のサポーターですが、膝の捻挫などで怪我をしてしまった場合、いつもテーピングをするわけにはいかないと思います。そのような時は膝のサポーターがお勧めです。経済的ですし、予防効果もあると思います。

しかし徐々に痛みがでるような障害の場合は膝のサポーターは効果がない場合も多いと思います。問題が足部や股関節、骨盤周囲にあることが多いからです。基本的に内側アーチが下がってしまうタイプの方はインソールを検討するのはよいと思います。足部の動きが変化してストレスを感じにくくなることもありますし、単に重心のかかる位置が変化することによって全体的にポジティブな変化を感じられることもあると思います。

また骨盤ベルトや骨盤周囲のコンプレッション機能があるスパッツやサポーターなども多少の変化を生み出して痛みを感じにくくなる可能性もあります。膝の関節は上にある股関節と下にある足関節の影響を受けるので、そちらを安定させるほうがより効果的である可能性は高いと思います。

これだけで治るわけではありませんが、痛みを感じにくくなるということは、今までかかっていたストレスが分散されたかどこか別の場所に移ったということでもあります。そのため今まで痛かったところが徐々に落ち着いてくることもあると思います。

こういう慢性的な痛みは、障害の場所が治っていないこともありますが、常にかかるストレスが取り除かれていないため、すなわち根本的な解決が図られていないために新たにストレスがかかっているからとも考えられます。少なくともそのいつもかかっているストレスを取り除いているわけですから、悪くはないと思います。

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