Vol.3
ハイピッチを持続させる
筋力の強化
RUNNERS COLUMN

速いランナーとゆっくりのランナーの違いは
どこにあるのでしょうか?

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今回はピッチ・脚の回転数のお話しからです。
速いランナーとゆっくりのランナーの違いは…当然、走っているスピードが違うということですが、ブレークダウンすると、脚の回転数である「ピッチ(ステップ頻度)」と1歩の歩幅「ストライド(ステップ長)」が違うということですね。

走っているときの速度は、ピッチ(脚の回転数・歩/分)×ストライド、(1歩幅・cm/歩)で計算されます。
※ピッチ:左右の足が1分間に地面に着く回数の合計
1分間あたり150歩のピッチで、1歩のストライドが80cmのランナーは、150歩×80cm=分速で12000cm=120m、時速に直すと7.2km(8:20/k)で走っていることになります。
1分間あたり180歩のピッチで、1歩のストライドが100cmのランナーは、180歩×100cm=分速で180m、時速10.8km(5:33/k)になります。

速く走れるということは、ピッチかストライド、あるいは両方が大きくなっているということです。

トップアスリートでは、野口みずき選手はピッチ197歩、ストライド151cm(身長の101%)、高橋尚子選手はピッチ209歩、ストライド145cm(身長の89%)程であったと言われており、掛けると時速18km(3:20/k)前後のものすごいスピードになります。 市民ランナーの方でも、
1000M?いや400M?いや100M?ぐらいまでならこのお二人に付いていけるでしょうか…短時間ならこのハイピッチ、ロングストライドで頑張れそうですね。でも距離が長くなるにつれて、脚が動かくなる、息苦しくなって…と離されていきます。

なので、自分が持続できる最適ピッチ×最適ストライド(=走速度)を身につけそれをより持続できるようにトレーニングで強化していきます。

ところで…

ご自身のピッチ数を知っていますか?

最近はピッチ計測機能がついたランニングウォッチも普及しているので、それならすぐに正確な数値がわかります。 持ってない方でも、1分間を走る中で、両足が地面に百何十回着くかを数えればいいのですが、以下のように工夫して計測すると数え間違えることなく正確です!!

(A)屋外で計測する場合
快適に感じる速度(フルマラソンペース)で走っているなかで、右足(片足)が50歩(両足で100歩)着くのにかかる時間をストップウォッチを使って少数点第一位まで測定します。 ストップウォッチを押してから走り始めるのではなく、一定スピードで走っている途中で測定してください。結果は30秒~36秒の範囲ぐらいになります。
■100÷計測した秒×60がピッチ数
例)100÷32.5(秒)×60=185歩/分
(B)トレッドミル(ランニングマシン)で計測するピッチを場合
同じく快適に感じる速度で走っているスピードで計測します。マシンのパネルに表示されている時間の30秒の間に片足が何回着地するかを数え、その数を4倍します。30秒で右足が40回着けば4倍して160ピッチ(歩/分)、45回であれば180ピッチ(歩/分)になります。
自分のピッチの値が、180を下回った方は、体格に関わらずピッチ数が少なくストライドが広くなり過ぎで着地の衝撃が大きくまた上に飛び跳ねる動き上下動が大きいと認識してください。
190以上あった人は非常にいいリズムで走れていると考えられますので、それ以上意識してピッチを高めていく必要は少なく、ストライドを無理なく自然に広げていくことが走レベルのアップになります。(これについては、連載第6回目にお話しします)
では…

ピッチ数を高め、またピッチ数を維持するためのトレーニング法を紹介します

まずはその速いピッチのリズムを実際感じることです。スマートフォンのアプリ等の「メトロノーム」を活用すれば、指定した頻度で音が鳴るので、180や185などに設定し、1分程聞きながら、その音にピッチを合わせて走りましょう。
トレッドミルで実施する時はピッチを上げても勝手にスピードは速くならないので、ストライドは狭くなり大きな上下動が顕著に改善されていくでしょう。屋外の時は、ピッチを上げてもストライドを狭くする意識を持ちます。ストライドを狭くしないと、走速度が上がります。そうなると「息が上がった」「脚が疲れ」たということになりますので、速度を変えずにピッチを上げるように気を付けましょう。ピッチ数を上げると、初めは脚が忙しく動き、違和感があるかも知れませんが、この新たな効率的なリズムに脚が慣れると脚の持久力の基礎がつくられてきます。

ペースダウンとは、ストライドが小さくなりピッチが落ちる・少なくなるということですが、走力の高い女性ランナーは一般的に190以上のピッチ数が多く、ピッチ数を高め、維持する意識を日頃から持っているので、フルレースでも最後までピッチが落ちることなく比較的ペースを維持できるようです。
ピッチ数が少なく、ストライドに頼って走っているランナー(ピッチ170程度以下)は脚への着地衝撃も大きく、足首の動きも大きいので、レース終盤では脚の太ももの前やふくらはぎの筋力の低下が大きく、ストライドもかなり狭くなり、ピッチも維持する意識がないことも重なり、大きく減速します。

ストライドが狭くなりつつある時にこそ、ピッチ数は落ちない様に意識し、膝を前へ送る意識を更に高め動かし、ペースを維持していくことが、ペースダウンを防ぐ要因の一つになります。その意識、動作に関連する筋肉が、股関節の付け根の腸腰筋(ちょうようきん)です。足が地面から離れる時に伸ばされていて、その後素早く縮んで、脚の回転、ピッチを高めていきます。 そのトレーニング法を今回も動画で説明します。

脚の回転、ピッチを高めるトレーニング

まずは、腸腰筋の動きの意識づけの運動です

ピッチを高めるウォーキング

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Vol.1 なぜ市民ランナーには筋力トレーニングが大切なのか? でも書きましたが、歩く時にもランニング動作との関連を意識しましょう。歩幅を広げるウォーキングでなく、ピッチを高めるウォーキングを行うと腸腰筋の意識が高まります。

ピッチの学習ドリル

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【ヒールアップ】

つま先を上げず踵をリズミカルに上げ下げします。膝を上げず前へ送る意識が身につきます。

【1.2.3ももあげ】

太ももを45度程度まで上げ、1.2.3で一瞬止めます。 素早く股関節を曲げる意識が身につきます。

次に筋トレです。回数は、1種目15~20回。
30秒以内の休息で2セット繰り替えします。

ステップ1

マシンでの「筋トレ」で、筋の意思を高め筋量を増やす基礎土台づくりが目的です

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ヒップフレクション・マシン

準備姿勢

  • ・腰の前のマシンの回転円盤の中心と腰の高さを合わせる
  • ・脚を後ろに反った位置から開始できるように、回転円盤のアームの開始位置をノブを引き調整する。

動作

  • ・脚を反らした状態より、45度程度まで膝を素早く上げます。
  • ・上げる時よりゆっくり戻します。マシントレーニングが出来ない方のためのゴムチューブ(ミニバンド)を使った代替の種目です
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ヒップフレクション・ゴムチューブ

マシントレーニングが出来ない方のためのゴムチューブ(ミニバンド)を使った代替の種目です。

準備姿勢

  • ・ゴムチューブ(ミニバンド)を前足の足首にかけ、後足は土踏まずにかけ踏みつけます。

動作

  • ・両手を腰に添え、上半身を真っ直ぐに立てます。
  • ・前足の膝を斜め前方向に引き上げ、1歩分前へ進みます。
  • ・後足を1歩分すり足で前へ進め、繰り返します。
  • ・壁を支えにしてその場で行うともできます。

ステップ2

自分の体重を負荷にした自体重の「筋トレ」を、走動作に類似した動作やスピードで行い、走りに関連する筋の出力アップが目的です

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ヒップフレクション・ランジスタイル

準備姿勢

  • ・前膝は90-120度
  • ・腰は前膝と同じ高さに
  • ・前後の脚のつま先、膝の向きを真っ直ぐに

動作

  • ・後ろ脚の膝を、前の膝を追い越すまで素早く前方へ動かします。
  • ・後ろ足が地面に着いている時間を短くしていき、徐々に動作速度を上げて行きましょう。
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フライングスプリット123ジャンプ

前月も紹介した種目ですが、今回は股関節の動きを意識して行います。

準備姿勢

  • ・前膝は90-120度
  • ・腰は前膝と同じ高さに
  • ・前後の脚のつま先、膝の向きを真っ直ぐに

動作

  • ・1、2のリズムで腰を小さく上げ下げし、3のタイミングで勢いよく跳び上がります
  • ・後ろ脚の股関節の付け根を素早く縮める意識を持ちます
  • ・着地時に前の膝を90度以上深く曲げない様に踏ん張ります
  • ・膝の向きとつま先が真っ直ぐの方向に向かないと過度なストレスが膝にかかるので注意!

ステップ3

自体重を使ったジャンプ系「筋トレ」で、出力されたエネルギーを無駄なくスピードアップ、持続力アップにつなげ、ランニングエコノミー(経済性)の改善が目的です

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スキップ

動作

Vol.2 着地衝撃に耐える筋力の強化で紹介した「ロングスキップ」を短い距離で速いスピードでも行います。

  • ・距離は50M程度
  • ・一歩一歩大きく上へ飛ぶことでなく、歩幅は小さめに膝を素早く前へ送り地面と平行に進む意識で。
  • ・足の裏全体で着地し足首をこねずに地面反発も活かします。