Vol.4
骨盤の安定性を高める
筋力の強化
RUNNERS COLUMN

「主働筋」「協働筋」「拮抗筋」を
バランスよく鍛えてスムーズな動きに繋げる。

運動において、ある関節を取り巻く「主働筋」「協働筋」「拮抗筋」をバランスよく鍛えることが、その関節の力強くスムーズな動きに繋がります。
ランニング時にもそれらの筋が複雑に協力して、股関節、膝関節、足関節(足首)の動きをつくりだしています。

ところで…

各ランニング動作で中心となり使われる
主働筋(しゅどうきん)」はドコ?

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  1. 1.着地時 太もも前の大腿四頭筋 :
    Vol.2 着地衝撃に耐える筋力の強化 参照
  2. 2.膝を前へ素早く送る動作 太ももの付け根の腸腰筋 : Vol.3 ハイピッチを持続させる筋力の強化 参照
  3. 3.踵をお尻に巻き込む動作 太もも裏のハムストリングス : 次回 Vol.5 前方への推進力を高める筋力の強化

「主働筋」の動作を補助する筋肉
協働筋(きょうどうきん)」はドコ?

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太もも内側の内転筋群

日常の動作では太ももを内へ閉じる動作で使われます。

内転筋群は足が接地している時も空中に浮いている時も、また太腿を前に振り出す時も後ろに振り戻す時もずっと活動をしている筋肉です。
なので「協働筋」である内転筋群をより強化することで「主働筋」である太もも前の大腿四頭筋と太もも裏のハムストリングスの補助につながり、脚のスイング動作を速めることができます。

「主働筋」の動作と逆に働く反対側の
拮抗筋(きっこうきん)」はドコ?

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内転筋群の「拮抗筋」はお尻の外側の中臀筋

中臀筋は日常の動作では太ももを外へ開く動作で使われます。

中臀筋をより強化することで大腿四頭筋の「協働筋」として、脚の着地衝撃に抗し腰や膝の落ちを防ぎます。そして「拮抗筋」の関係にある内転筋群と中臀筋をバランスよく強化することで骨盤の安定性が高まります。下半身全体の無駄なブレが少なくなり、ランニングの経済性が高まっていきます。

私はフルマラソンのレース中に脚が攣ることが2年前では頻発していました。
ふくらはぎ(腓腹筋)、すねの前(前脛骨筋)、太ももの裏(ハムストリングス)と1回のレースでこれらの全部の部位が攣ったこともあります。

ただ最近は、フォームの修正、シューズの変更、関節柔軟性の回復、水分摂取法等に普段の練習からレース前まで積極的な予防的な取組みを行い、攣ることはなくなりました。しかし、この夏の練習で15%もの傾斜が続く山道を走って上ったいたら4K地点でなんと…内もも(長内転筋)が攣りました普段のランニング時には意識していないこの内転筋群、上りで太ももの前を酷使する動作が続くと大腿四頭筋の協働筋であるこの筋群にもダメージが広がり悲鳴を上げてしまったのですが、その時に内転筋群の縁の下の働きを実感しました。

動画で見る! 内転筋群と中臀筋のトレーニング法

まずは、動きの意識づけの運動です

中臀筋のトレーニングを行ったことがない市民ランナーが多いので、拳でトントンとお尻の横側を叩きながら筋への意識を高める次の2種目をウォーミングアップ時に実施しましょう。

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膝抱え込み

動作

  • ・前屈し膝の下を両手で抱え、膝を胸に近づけて上体を起こし静止します。
  • ・片手を離し、お尻外の硬くなっている部分を軽く叩きます。
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シングルハーフスクワット

動作

  • ・片足で行うスクワット運動です。
  • ・膝を前に出しすぎないよう、お尻をひきゆっくりとスピードをコントロールし腰を落としていきます。
  • ・静止したらお尻の外が硬くなっている部分を軽く叩きます

次に筋トレです

回数は、1種目15〜20回。30秒以内の休息で2セット繰り返します。 (A)内転筋群と(B)中臀筋の両種目を同じ日のトレーニングで行いましょう。

ステップ1

マシンでの「筋トレ」で、筋の意識を高め筋量を増やす基礎土台づくりが目的です

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(A1)ヒップアダクション・マシン

準備姿勢

  • ・できるだけ膝を開いた位置から開始します
  • ・背もたれシートに腰、背中をしっかり押し付けます

動作

  • ・膝を素早く閉じ、1秒ほど止めゆっくり戻します
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(B1)ヒップアブダクション・マシン

準備姿勢

  • ・できるだけ膝を閉じた位置から開始します
  • ・背もたれシートに腰、背中をしっかり押し付けます

動作

  • ・膝を大きく開き、1秒ほど止めゆっくり戻します

ステップ2

自分の体重を負荷にした自体重の「筋トレ」を、走動作に類似した動作やスピードで行い、走りに関連する筋の出力アップが目的です

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(A2)サイドランジ

動作

  • ・頭、視線の高さを変えないように左右に平行移動します。
  • ・体重がかかる反対のつま先はしっかり上げます。
  • ・腰の位置をより低くする、左右で静止している時間を増やすと更に負荷が高まります。
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(B2)サイドステップ

動作

  • ・四股の動作のように、片足立ちになりその脚に完全に体重を乗せ止まります。
  • ・1秒ほど静止後、反対脚を上げながら横へ大きくステップします。
  • ・飛び跳ねないように繰り返します。
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(A3)フライングスプリット123ジャンプ

動作

Vol.3 ハイピッチを持続させる筋力の強化 でも紹介しましたが、今回は内転筋群の動きを大きくして行います。

準備姿勢

  • ・前膝は90-120度
  • ・腰は前膝と同じ高さに
  • ・前後の脚のつま先、膝の向きを真っ直ぐに

動作

  • ・1、2のリズムで腰を大きく上げ下げし、3のタイミングで勢いよく跳び上がります
  • ・着地時に前の膝を90度以上深く曲げない様に踏ん張ります
  • ・膝の向きとつま先が真っ直ぐの方向に向かないと過度なストレスが膝にかかるので注意!
  • ・足の裏全体で着地し足首をこねずに地面反発も活かします。

3種目をサーキット形式で種目間の休憩を入れず連続的に行い、短時間で中臀筋への負荷を高めます。

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1.ヒップアブダクション・オルタネート(ミニバンド使用)

準備姿勢

【バンドの位置】 両足とも足首

動作

  • ・腰に手を当て、膝を曲げ少し前傾します
  • ・踵から足を斜め上に持ち上げ、上げきったら止めます
  • ・足を戻す時は上がるときよりもゆっくりと。
  • ・鏡などで、前に体が傾いていないかも確認します。
2.サイドウォーク(ミニバンド使用)

準備姿勢

【バンドの位置】 両足とも足首

動作

  • ・腰に手を当て、膝を曲げ少し前傾します
  • ・先に開く足の歩幅は大きく、後足は小さく、常にバンドのテンションをかけておきます。
  • ・横に8-10歩程度を往復します。
3.開閉ジャンプ(ミニバンド使用)

準備姿勢

【バンドの位置】 両足とも足首

動作

  • ・足を開くときに脇を開き肘を上げリズミカルに繰り返します。
  • ・踵をつけずに接地時間を短くします
  • ・開いて着地した足は少し踵が外につま先は内に向きます。
  • ・足を閉じた時に足の間隔が狭くなるとバンドのテンションがなくなる(筋肉が休んでしまう)ので気を付けます。

ステップ3

自体重を使ったジャンプ系「筋トレ」で、出力されたエネルギーを無駄なくスピードアップ、持続力アップにつなげ、ランニングエコノミー(経済性)の改善が目的です

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(A4)ミニジャンプ・ストップ・前進(ミニボール)

準備姿勢

  • ・直径20cm程の弾力性のある小さなゴムボールを内もも部に挟み込みます。

動作

  • ・着地時に瞬間的に内ももに力を入れ完全静止を繰り返し、10歩程度前進します。
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(B4)片足交互ジャンプ・斜め前進

動作

  • ・一旦停止しながら、斜め前方へのジャンプを繰り返します。
  • ・着地時には、腰と膝が少し曲がりますが、太ももとお尻外側の筋意識を高めバランスを崩さないようします。
  • ・跳ぶ距離は小さくても良いので、確実の止まる動作で10歩程度行います。