よく耳にする「体幹」の使い方から、腕振り、足運びまで。色々な情報が手に入る中、皆さんご自身の走り方に関して多くの課題や疑問を持ちながら走られているようです。練習会やクリニックなどで指導する際、こちらとしては「自分が知っている情報をなるべく多くお伝えしたい」そんな気持ちで教えてきたのですが…『何を取り組めばいいのか混乱してしまう/何も覚えられなかった/大切なものを1つだけでいいので教えてください』そうした声が聞こえてくるようになりました。
そんな経緯もあって、現在は3つのポイントに絞り、分類して、アドバイスするようになりました。そのメソッドは書籍化され「こけし走り」(池田書店)として現在販売されています。
(※イラストは著書「こけし走り」からの出典となります)
[こけし概要]
体幹は人を樹にたとえて考えると「幹」の部分にあたります。そして腕や脚はそこから生えている「枝」と言えます。「枝」だけの力に頼っていては大きな力は出せません。長時間持続させることも困難です。
体幹「幹」から生み出されたエネルギーを上手に腕・脚「枝」へ伝えていくことが大切です。<幹→枝>という力伝達は、釣竿をしならせる動きと似ています。付け根は太く、先っぽは細くて繊細です。枝先だけでは到底効率良いパフォーマンスを発揮できません。
「こ:骨盤」と、「け:肩甲骨」は四肢の付け根にあたります。図の四角い部分=体幹の中に含まれています。その意識を当たり前に持って生活することで、好循環が生まれます。例えばラジオ体操の腕回しの動作で、この意識の有無がはっきりわかります。両肩を支点に腕を回していませんでしたか?これからはより奥深い部分に付け根があるという意識を持ってください。これに体の中心軸・大黒柱である、「し:姿勢」が加わり「こ」「け」「し」となります。
それでは、個々の説明を続けましょう。
適度に前傾させて柔らかく走ります。ランニング中にはほんのわずかな動きですが左右の骨盤が回旋するようなメカニズムです。ですが、残念ながら多くの方は硬直してしまい、柔らかくしなやかな動きが出来ていません。結果、膝関節から枝先にかけての動力に頼って走らざるを得なくなります。
付け根が動かない。枝先に頼る。疲れやすく、怪我をしやすいと言えます。
「つま先 or 踵どちらから着地ですか?」という質問をよく受けますが、その前に解決しておかない基本構造がここなのです。末端ではなくて、付け根へ。脚の上へ遡り、動きの源である骨盤から脚が動かせている走りをしっかり体得しましょう。
肩甲骨を使って後ろ方向へ引くような腕振りを心がけましょう。腕は肩が付け根ではなく鎖骨を伝って、胸鎖関節で胴体とはじめて連結しています。ここが付け根です。肩ではないのです。真面目なランナーほど一生懸命に肩を力ませて腕を振っています。
肩や鎖骨まわり硬直すると、やわらかい腕振りができません。力が下半身に伝わらない、いわば腕振りのための腕振りに陥ってしまうのです。また、肋骨の中には肺があります。肩甲骨と鎖骨まわりが萎縮すると呼吸は浅くなります。柔らかく使うことで有酸素運動に欠かせない深い呼吸換気が可能となるのです。
体の大黒柱。中心の軸という役割については Vol.2 ランニングと体重移動 で説明をしました。そちらを参考にしてみてください。
体を4輪駆動車に例えると、前輪と後輪の動力を結びつけるような役割です。この中心軸が崩れてしまうと、ギアが上手く噛み合わない走りとなってしまいます。腕を振っていても、下半身には連動しない。推進力につながらない。脚だけの筋力に依存した走り。上体・下半身がバラバラになってしまいます。
上記のような姿勢の方、身に覚えはありませんか?(左×/右○)
垂直に立ち上がり、2本の脚で走るメカニズムになります。でんでん太鼓を回す動きをイメージしてください。柄は背骨。紐が腕になります。
肩甲骨と背骨により生み出された腕振りの動力は骨盤へと伝わります。でんでん太鼓を上下逆さにひっくり返した状況をイメージしてください。上体から伝達されたエネルギーは太鼓(骨盤)へと伝わり紐(脚)がスウィングします。
腕だけの腕ふり、脚だけの足運びは疲れやすいのです。
日中長い時間同じ姿勢が続くような生活習慣の方は、骨盤や肩甲骨は凝り固まりやすくなっています。常に活性化させる、走る前にはエクササイズを取り入れるなどして、しなやかに使えるように体をメンテナンスしてください。
崩れた姿勢は、体の圧力が上手く保てないことも一要因となっています。適度な圧力によって理想的な姿勢を保持するという目的でマクダビッドのアクティブリカバリータイツ(8810)を着用して生活するのも1つの方法だと思います。座り仕事時にも楽に良い姿勢を維持できるので、仕事もはかどるような気がします(齊藤感覚)
今回はこけしの3要素を活性化するために、ランニング前やランニング中に取り入れたいエクササイズを紹介します。繰り返し取り組むことで「走るために体をどう使うか」という頭の中にあるプログラムが改善されてきます。日々取り組んでください。
首筋の筋肉を伸縮⇔脱力 を繰り返し、力みを取る
胸鎖関節を抑えて、腕を回す。腕はまち針にくっついているロープのような感覚。鎖骨からが腕だという意識を持ち、「枝=腕」には力を入れない。肩甲骨をやわらかく使う。
肩甲骨を使って大きくスウィング。両腕を引いた時に「C」の時になるようなイメージで取り組む。肩を力ませないように注意する。
左右の骨盤を柔らかく動かせるようにするエクササイズ。終始上体がリラックスできるように心がける。肩が一緒に動いてしまわないよう注意。
骨盤を自転車のペダルのように左右交互に回転させて進む。脚はゼロパワー。骨によって支えられる
骨盤から脚を落とす。重力を利用する。
正しい姿勢をつくる ※vol.1走るって、どういう運動? で説明済
振り下ろした足で、しっかり地面をとらえる。ぐらつくことなく体を支える。
1、2、「3歩目」で一時停止。左右交互にぴたっと地面を捉える。姿勢が崩れないようにする。