肘関節は、肩の強力な動きと手の緻密な運動制御力をリンクさせる役割を持っています。ただ、潜在的な機能障害性のケガの部位としては、しばしば見落とされていることがあります。
肘関節を含めた腕は、物を持ち上げる・運ぶ・衝突の際のクッション・転倒時の体の勢いを和らげることができます。また、多くのスポーツで、ラケット・クラブを振る、あるいは投球時・補給時に手を目的の場所に適切に移動させられるかは、いかに腕、しいては肘関節を効果的に使えるかにかかっています。
主たる肘関節(腕尺関節)は、蝶番関節にあたります。蝶番関節とは片方の骨の表面が凸曲面(尺骨)であり、 これがもう一方の骨の凹曲面(上腕骨)のくぼみに適合する関節のことをいいます。ドアの蝶番のように一方向のみに動きます。よって肘関節の構成は膝関節と非常に類似しており、主な動きは屈曲と伸展となります。
また肘に関係する関節に腕橈関節と上橈尺関節があり、どちらも前腕を捻じる回内/回外という動作に関与します。腕橈関節は球関節にあたり、肘の回内/回外だけでなく屈曲/伸展にも関与します。近位橈尺関節は車軸関節にあたり、前腕の回内/回外に関与します。
【肘関節(腕尺関節)】
屈曲・・・145°
伸展・・・5°
【前腕(腕橈関節・近位橈尺関節)】
回内・・・90°
回外・・・90°
上腕骨(じょうわんこつ)
肩から始まり肘関節をつくる骨の一つ。肘に向けて骨は左右に広がり上顆を形成します。この両側の上顆に靭帯や筋肉が付着することで肘ができています。また上腕骨滑車を形成しています。
尺骨(しゃっこつ)
前腕にある二つの骨の内側の一つ。肘方位には滑車切痕とよばれる特徴のある骨の構造が作られており、これが上腕骨滑車を包むようにはまることで腕尺関節を形成しています。
橈骨(とうこつ)
前腕にある二つの骨のうち、外側の骨。肘方位では小さく細いシリンダーのような形状をしています。また隣接している尺骨と近位橈尺関節を形成します。
内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)
上腕骨内側上顆から、尺骨に向けて付着しています。前部、後部、横走の3つの線維束が三角形を描くように配置されています。肘の運動により各線維束の緊張は変化します。各線維束のうち前部線維束が最も強度が強いと言われており、外反および伸展・屈曲で緊張が高まります。
◯役割・・・肘の外側からのストレス(外反)に抵抗し、肘を保護します
前面
主となる筋は上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋で、上腕骨前面から始まり、尺骨か橈骨に付着しています。肘の屈曲の役割を持っています。
後面
上腕三頭筋は肘の伸展の役割を持っています。長頭は肩甲骨の一部から、外側頭・内側頭は上腕骨後面から始まり、尺骨の肘頭に付着しています。
内側(尺側)
上腕骨内側上顆から起り、手首・手指の掌側に付着しています。手首、手指の屈曲の役割を持っています。橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、長掌筋が主要な筋肉です。
外側(橈側)
上腕骨外側上顆から起り、手首・手指の甲側に付着しています。手首、手指の伸展の役割を持っています。橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、総指伸筋が主要な筋肉です。
※前腕部の内側・外側は手のひらを正面に向けた状態を基準に決まります。この手のひらを正面に向けて立った姿勢を解剖学的肢位と呼び、筋肉など解剖学において基準となる姿勢になります。よって親指側(橈側)が外側となり、小指側(尺側)が内側となります。