カラダとケガについて
前十字靭帯損傷
Anterior Cruciate Ligament (ACL)McDavid
SPORTMED LABO

前十字靭帯損傷とは

膝関節を痛める理由で最も多いのは、前十字靭帯を傷つけることです。前十字靭帯は関節内で大腿骨と脛骨を繋ぎ合わせている靭帯の一つで、膝を安定させる役割を持っています。ジャンプやランニング中に急な動きや、素早く鋭い方向転換をした時に、靭帯を伸ばしたり切れてしまったりします。多くの場合で痛みを伴い、歩行困難もしくは負傷した脚に体重や圧をかけることが難しくなります。

どのようにして起こるか

前十字靭帯は4つある膝の主要な靭帯の1つです。関節内部、脛骨の前部から大腿骨の後部に向かって伸びる靭帯で、膝関節の過伸展(伸びすぎること)を予防します。また大腿骨に対して脛骨が前方にズレることを制限します。

前十字靭帯は通常、スポーツや運動中に負傷します。特にカッティング(急激な方向転換)やツイスト動作を頻繁に行うスポーツ(例えばアメフト、サッカー、バスケットボール、ラクロス、新体操など)では負傷率が比較的に高い。これは膝が内側に入る動き(ニーイン)と体をひねる動作が、前十字靭帯に極度のストレスをかけてしまうためです。急に止まったり、急激な方向転換をしたりする際に大腿四頭筋が強く収縮し、脛骨を前方に引っ張ることで前十字靭帯にストレスが過度にかかり負傷します。

ケガの重症度からコンタクト(接触)スポーツで負傷するイメージがありますが、ノンコンタクト(非接触)スポーツで負傷することの方が圧倒的に多いです。

また、前十字靭帯のケガは男子よりも女子に多い傾向にあります。

症状

多くの人が受傷時に、ヒザ内部に弾けるような音がするといわれていますが、必ずしも誰にでも起こるというわけではありません。

一般的な症状

痛み
軽症の場合は痛みを感じないこともあります。膝の関節線にそって痛みを感じ、人によっては立ち上がったり、負傷した脚に体重や圧をかけるのが困難な場合があります。

腫れ
最初の24時間以内に発生する可能性が最も高い症状です。腫れを抑えるために、膝に氷のうを当てたり、患部を枕の上にあげるなど拳上をすることもできます。

歩行困難
体重を乗せることができても、通常時よりも格段に歩くことが難しいと感じます。また、人によっては膝関節が必要以上に緩いと感じることもあります。

可動域の低下
前十字靭帯を損傷すると、通常通りに膝を曲げ伸ばしすることができなくなる可能性が高くなります。

重症度

Ⅰ度(軽度)
靱帯の損傷はしていないが、伸びている状態

Ⅱ度(中度)
靭帯に損傷はあるが、断裂していない状態

Ⅲ度(重度)
靭帯が断裂している状態

中度、重度の場合は、競技復帰を安全に進めるために手術を行う場合もありますので、医師にご相談ください。

フィジカル コンディショニング

スクワット 下肢筋力の向上

1.足幅は肩幅よりも少し広めで、つま先を少し外側に向ける。
2.椅子に座るようにしゃがみ、足裏全体で地面を押して立ち上がる。

ONE POINT
すねと上半身が平行になるようにする。
目標は太ももと床が平行になるまでしゃがむ。
リハビリの序盤は半分程度しゃがむハーフスクワット(動画後半)も有効である。

ラテラルスクワット 下肢筋力の向上・横方向の動きの強化

1.肩幅の1.5倍くらいの幅に足を広げ、つま先は正面(または少しだけ外側)に向けて立つ。
2.片側の膝と股関節を曲げ、太ももが地面と平行になるところまでお尻を下げる。
3.スタートポジションに戻る。

ONE POINT
上半身を捻らないようにし、おへそは常に正面を向くようにする。

スプリットスクワット 下肢筋力の向上

1.立位の状態で片足を少し後ろにつく。
2.後ろに動かした膝から頭までが一直線になるように姿勢を維持しながら、体を下げる。
3.前足を力強く踏むように立ち上がる。

ONE POINT
体が床と垂直になるところから始めて、少し前傾になるようにすると前足への負荷が上がる。
姿勢が崩れないようにすることがポイント。前足のお尻を使う感じがあれば上手くできている。

スクワットジャンプ ジャンプ動作の基礎・着地動作の練習

1.軽く足を広げ、膝と股関節を少し曲げハーフスクワットの姿勢になる。
2.そこから腕を軽く振り、跳ぶ。同じようにハーフスクワットの形で着地する。

ONE POINT
この着地姿勢の練習なので、まずは一回ずつ確実に静止する。
上手くできるようになってきたら、立っている状態から反動をつけて跳ぶようにする。

シングルレッグヒップリフト 殿筋群の強化

1.仰向けに寝て、両膝を曲げて片足を胸の前で抱える。
2.そのままもう片方の足に力を入れてお尻を持ち上げる。

ONE POINT
高く上げることよりも、お尻に力が入る感覚を感じる方が重要。膝の角度が大きいとモモ裏を使うようになる。