カラダとケガについて
肩の解剖学
Anatomy of the shoulderMcDavid
SPORTMED LABO

肩関節とは

肩関節は他の関節と比べて、可動域が格段に広く様々な方向に動かすことができるようになっているので、身体の中でもっとも複雑な構造をしているといっても過言ではありません。他の関節で見られるような骨格や靭帯による安定性が肩部分には欠けており、肩関節(肩甲上腕関節)の安定性は周囲の筋肉に頼る形となっていますが、本質的に不安定であるのに変わりはありません。

肩関節(肩甲上腕関節)の上には鎖骨と肩甲骨(肩峰)をつなぎ合わせる関節(肩鎖関節)があります。肩鎖関節は肩の位置を保つの役割と上肢を胴体に繋ぎとめる重要な役割を担っています。腕の動きに対して肩甲骨と共に上下左右・回旋の動きを起こします。

また、肩には肩甲胸郭関節と呼ばれる機能的関節があり、この関節は肩関節において非常に重要や役割を果たします。肩甲胸郭関節の機能低下は肩のケガに大きく影響します。

肩の傷害は、投球動作などの直接的なストレス/力が加わること、もしくは転倒などの上肢へのストレス/力が腕を通じて加わることで起こる二つの種類があります。

関節の種類

主たる肩関節(肩甲上腕関節)は、球関節にあたります。球関節は、片方の関節面が球状になっていて、対するもう一方の関節面はカップ状のくぼみの形状をしています。この球状の関節面が対するカップ状の関節面にはまっている状態ですが、肩関節におけるカップ状の関節面は非常に小さく、ゴルフボールとティーのような関係性になっています。そのため、肩関節(肩甲上腕関節)は他の球関節よりも安定性が低くなっています。また、球関節は3軸性の動きを可能にしています。

肩鎖関節は平面関節にあたります。関節をなす両方の骨の関節面は平面あるいは平面に近い曲面であり、前後・左右への運動が可能です。平面関節は2軸性の動きが可能ですが、お互いの関節面で回旋することもできるため3軸性の関節ともいえます。

肩甲胸郭関節は機能的関節と呼ばれます。この関節は靭帯で直接繋がっていませんが、関節の機能を持ち、肩関節の動作に非常に大きな影響を与えます。

肩関節では以下のような様々な動きが可能ですが、これは複数の関節の組み合わせで起こります。特に肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節は挙上動作に非常に大きな影響を与えます。

正常関節可動域 (日本整形外科学会より引用)

屈曲・・・180°
伸展・・・50°
外転・・・180°
内転・・・0°
内旋・・・80°
外旋・・・60°

肩甲骨(けんこうこつ)
平らな形状をしていて、胸部の背面少し外側寄りに位置しています(第2~第7肋骨)。
・肩甲骨の後面を上下に分けるよう際立った隆起を肩甲棘と呼びます。
・肩甲棘の外側先端部分、突起部分を肩峰と呼びます。
・肩峰の下に、カップ状のくぼみ部分を関節窩と呼びます。

上腕骨(じょうわんこつ)
上肢のなかでもっとも長く・大きい骨です。遠位では肘関節を形成しているが、近位では肩関節を形成しています。近位部分は丸い上腕骨頭になっており、これが肩甲骨の関節窩にはまります。

鎖骨(さこつ)
身体の中心に近い方は前方へ、遠い方は後方へ突出しており、S字の形をしています。上肢を胴体と繋げる役割があり、力の伝達に関与します。

靭帯

関節包(かんせつほう)
薄い繊維状の靭帯の集まりで関節全体を覆っています。
◯役割・・・上腕骨を関節窩に接続させ、関節を安定させます。

関節上腕靭帯(かんせつじょうわんじんたい)
関節窩と上腕骨をつなぐ3つ靭帯であるが、明確な関節構造ではありません。
◯役割・・・関節包を厚くします。

肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)
肩峰の下ある滑液の入った袋です。
◯役割・・・腱板を保護し、肩の動きを円滑にします。

筋肉

僧帽筋(そうぼうきん)
3つのパートに分けられ、それぞれ肩甲骨を動かします。

三角筋(さんかくきん)
前部は屈曲と内旋、中部は外転、後部は伸展と外旋させます。

広背筋(こうはいきん)
上腕を伸展・内転・内旋させます。

菱形筋(りょうけいきん)
肩甲骨を拳上・内転、下方に回旋させます。

棘上筋(きょくじょうきん)
上腕を外転させます。

棘下筋(きょっかきん)
上腕を外旋させる。

小円筋(しょうえんきん)
上腕を外旋・伸展させます。

大円筋(だいえんきん)
上腕を伸展させます。また内転と内旋を補助します。

前鋸筋(ぜんきょきん)
肩甲骨を外転して、下方に回旋させます。

肩甲下筋(けんこうかきん)
上腕を内旋させます。

大胸筋(だいきょうきん)
上腕を内転させます。

※棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つは腱板/ローテーターカフと呼ばれます。いわゆる肩のインナーマッスルとして知られるものになります。