ランニングにおけるコンディショニングでは、ランニングの動きの特性を理解し、
適切なエクササイズを行い、身体状態をより良く調整することが重要です。
身体を正常な状態に維持することでケガの予防につながり、
結果的にパフォーマンスの向上にも繋がります。
1.加速と減速の繰り返しによる、力の伝達と蓄積を行う全身運動。
2.前後の動きだけでなく、腕や脚の振りによる捻じれが起こるため見た目以上に複雑な運動。
3.多くの場合、長距離の運動となるため、疲労蓄積によるケガが発生しやすい。
※ここでの『ランニング』は中長距離の走る動作となる“ジョギング”を含め、スプリントなどの短距離の走りは含めない。
ランニングで発生するケガの多くは、繰り返しの動作による疲労が原因で身体機能が低下し、特定の部位に過度に負担がかかり、痛みを引き起こします。
ヒザを酷使するスポーツのためヒザに問題があると思われますが、実際には足部・足関節・股関節など別の部位の機能低下が原因で、ヒザの機能が低下している場合が多くあります。
この場合、原因となる足部・足関節・股関節を改善していなければ、ヒザの機能低下が再発することになります。そのため原因がどの部位なのかを明確にし、対処することが重要です。
ランニングでは体幹を前後に傾けるような負荷が常にかかっていて、それを腰部の筋肉を使い、安定させています。そのため距離が長くなれば長くなるほど、腰部にかかる負担は大きくなり、ケガに繋がります。また股関節・骨盤・胸椎・胸郭の機能低下は腰部の筋肉や椎間板などの軟部組織のケガを招き、痛みや可動域制限を引き起こし、ランニングを困難にします。根本の原因が腰部ではなく、股関節・骨盤・腰椎・胸郭などに機能低下が起きて腰部に大きな負担がかかり、ケガとなります。この根本となる原因を解決せずに腰部の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
足部は唯一地面と接触する部位ということもあり、長距離のランニングで頻繁にケガが起こります。根本の原因が足部にないことがあり、足首や膝関節などに機能低下が起き、その結果として足部に大きな負担がかかり、痛みや足趾を含めた足部の可動域制限、アーチの破綻が起こり、ランニングが困難となります。特に不適切なサイズのシューズを履くことでこの問題は助長することが多くあります。この根本となる原因を解決せずに足部の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
足底筋膜炎
ランニングでは細長い2本の骨と周囲の筋肉で支えている下腿部に度重なる負荷がかかり、疲労の蓄積により筋肉や腱の炎症、骨折などが起こります。 根本の原因が下腿部にあることは少なく、足部・足首・膝関節・股関節などに機能低下が起き、下腿部の負担が増大して痛み、こむら返り(痙攣)や腫れが起こり、ランニングが困難になります。 この根本となる原因を解決せずに下腿部の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
ランニングでは股関節や骨盤は非常な重要な役割を持ち、この部位の可動域の低下が起こるとランニングフォームに悪影響を与えます。また酷使することで、痛みや可動域制限が起こり、筋肉や靭帯のケガ、場合によっては歩行困難になることもあります。根本の原因が股関節や骨盤ではなく、膝や体幹などに機能低下が起きて股関節や骨盤に大きな負担がかかり、ケガとなります。この根本となる原因を解決せずに股関節や骨盤の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
鼠径部痛症候群(グロインペイン)
仙腸関節障害
大腿骨寛骨臼インピンジメント
ランニングではヒザの曲げ伸ばしが何度も行われる為、非常に酷使します。その結果、ヒザや大腿部にかかる負担も大きくなり、筋肉、腱、靭帯のケガが起こります。根本の原因がヒザや大腿部にあることは少なく、足部・足首・股関節・骨盤・体幹部などに機能低下が起き大きな負担がかかり、痛みや腫れ、可動域制限が起こり、ランニングが困難になります。この根本となる原因を解決せずにヒザや大腿部の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
ランニングでは不整地で足が引っ掛かり捻挫をしてしまうことがあります。また負荷の蓄積により足首周囲の筋肉や靭帯に炎症が起こり、痛みや可動域制限が起こり、ランニングが困難になることがあります。捻挫は防げないこともありますが、負荷の蓄積によるケガは足部、膝関節、股関節の機能低下が原因または影響していることが多くあります。急性の捻挫の場合は特に、応急手当を行った上で医療機関を受診し、筋肉や靭帯だけでなく骨折の有無を明確にします。慢性のケガの場合は、根本となる原因を解決せずに足首の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
ここでは身体の状態を知るヒントとなるセルフチェックを紹介します。
まずは自分の身体の状態を把握し、それに合ったコンディショニングを行いましょう。
このセルフチェックでは主に自動可動域(自ら運動を行った時の関節の可動範囲)をチェックします。
ランニングは全身運動のため、身体のどこかで制限があるとそれが他の部位へ影響します。
そのため、ケガをしている部位に関わらず、制限が大きいところから重点的にコンディショニングを行いましょう。
セルフチェックで制限が大きかった部位から重点的にエクササイズをしていきます。
エクササイズは毎日~最低でも2日に1回は行いましょう。
練習前やお風呂上りなどに行うとより効果的です。
定期的にメニューを実施し、2-3週間後に再度セルフチェックをして改善しているか確認しましょう。
※セルフチェックはコンディショニングの方向性を示すもので、診断をするものではありません。日常生活に影響するような痛みや痛みでスポーツ動作ができない場合は、医療機関を受診してください。
※コンディショニングエクササイズはセルフチェックで判明した可動域制限を改善するためのものであり、ケガの治療を行うものではありません。もし痛みがある場合は患部の治療を受けるようにしてください。
また、ケガをしている部分に痛みが生じる場合はエクササイズを中止しましょう。痛みは脳からの危険信号ですので、痛みがある状態で動作を続けても身体にとって良い結果が得られることは稀です。