バレーボールにおけるコンディショニングでは、バレーボールの動きの特性を理解し、
適切なエクササイズを行い、身体状態をより良く調整することが重要です。
身体を正常な状態に維持することでケガの予防につながり、
結果的にパフォーマンスの向上にも繋がります。
1.ストップ動作からのジャンプによる力の蓄積と発揮を繰り返し行う運動。
2.着地を何度も繰り返す為、大きな衝撃に対する耐久性が必要な運動。
3.空中での身体操作を巧みに行い、強力な力を生み出す必要がある複雑な運動。
バレーボールで発生するケガの多くは、着地やスパイク動作の繰り返しによる疲労が原因となり、身体機能が低下し、特定の部位に過度に負担がかかり痛みを引き起こします。
ヒザや肩に問題があると思われることが多いですが、実際には足関節や股関節、胸郭など別の部位の機能低下が原因で、ヒザの機能が低下している場合が多くあります。
この場合、原因となる足関節や股関節、胸郭を改善していなければ、ヒザや肩の機能低下が再発することになります。そのため原因がどの部位の機能低下なのかを明確にし、対処することが重要です。
スパイクやサーブ動作は空中で身体を捻じる(回旋)ことでより強い力の伝達をしますが、地面に身体が接地していないため、身体を安定させることが難しく、ボールとのインパクト時に肩には多大な負荷がかかります。また原因は様々ですが、下半身や体幹の捻じれ(回旋)が不足していることにより肩による捻じれを代償し負担が過剰になることがあります。肩には腱板・靭帯・関節唇・軟骨など多くの組織があり、それらが度重なる負荷により損傷します。肩のケガの症状は様々ですが、多くの場合、プレー時の痛みや不安定性、可動域制限が起こります。スパイクやサーブでの酷使が原因となることが多いですが、根本の原因が肩ではなく、股関節や体幹などに機能低下が起きて肩に大きな負担がかかり、ケガとなります。この根本となる原因を解決せずに股関節・骨盤の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
ジャンプの踏切りの際のパワー発揮や、着地時の衝撃吸収・耐久に股関節や大腿部が非常に大きな役割を持っています。また同時にバレーボールではこれらの部位は酷使される為、筋肉や靭帯のケガが多く起きます。根本の原因が股関節・大腿部ではなく膝や体幹などに機能低下が起きて股関節・大腿部に大きな負担がかかり、痛みや可動域制限が引き起こされ、場合によっては歩行困難になることもあります。この根本となる原因を解決せずに股関節・骨盤の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
大腿部筋挫傷(肉離れ/打撲)
鼠径部痛症候群(グロインペイン)
仙腸関節障害
ヒザは非常に酷使され、筋肉・腱・靭帯のケガが起こります。ジャンプの過多によってかかるヒザへの負担が原因となることが多いですが、その負担も足部・足首・股関節・骨盤・体幹部など他の部位に機能低下があると倍増するため、関係する部位の機能を正常に維持することは非常に重要となります。根本の原因がヒザにあることは少なく、足部・足首・股関節・骨盤・体幹部などに機能低下が起き、その結果として痛み・腫れ・可動域制限・不安定性などが起こります。根本となる原因を解決せずにヒザの痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
ヒジは肩と同様にスパイクやサーブ動作で痛みを発症します。ヒジに直接の問題がある事は少なく、股関節や体幹部の機能低下がきっかけとなって起こることが多く、これらを改善せずに競技を続けることでヒジに負荷がかかり痛みが生じます。また手首や手指のケガも頻繁に起こります。これらのケガは主に接触を伴うものが多く、強打のブロック・レシーブの際や転倒時に地面に手を着いた際に受傷します。どのケガも接触が原因となることが多く、防ぐのが非常に難しい部位となります。ただし、ヒジは他の部位のコンディショニングを正常に維持しておくことで、力をうまく逃がすこともできるようになるため、防げるケガもあります。
レシーブの際の前屈みやジャンプでの着地、サーブやスパイク時に上体を反る動作は腰へ大きなストレスを与えます。これらの動作を繰り返すことで腰には圧縮や剪断のストレスが加わり、結果として腰痛などの腰部疾患を発症します。特に足首や股関節などに可動域制限などの機能低下が起きていると、ストレスが腰部へ集中し、ケガのリスクが高くなります。コンディション不良によって起こるケガの場合はその根本となる原因を解決しないことには治りが遅くなり、再発することが多くなります。その原因も症状がある部位とは異なる部位にある事が多い為、原因を明確にし、改善することが重要となります。根本の原因を解決し、競技復帰し再受傷のリスクを軽減することが非常に重要となります。
バレーボールにおいて起こる足首のケガは、主に着地時に選手の足に乗ってしまいケガをする捻挫が大半です。また度重なるジャンプの繰り返し負荷の蓄積により足首や下腿の筋肉や靭帯に炎症が起こり、痛み、可動域制限、こむら返り(痙攣)が起こり、プレーが困難になることがあります。中には防げない場合もありますが、負荷の蓄積によるケガの場合、足部・膝関節・股関節の機能低下が原因または影響していることが多くあります。急性の捻挫の場合は特に、応急手当を行った上で医療機関を受診し、筋肉や靭帯だけでなく骨折の有無を明確にします。慢性のケガの場合は、根本となる原因を解決せずに足首の痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると、再発するリスクが非常に高くなります。
ここでは身体の状態を知るヒントとなるセルフチェックを紹介します。
まずは自分の身体の状態を把握し、それに合ったコンディショニングを行いましょう。
このセルフチェックでは主に自動可動域(自ら運動を行った時の関節の可動範囲)をチェックします。
バレーボールは全身運動のため、身体のどこかで制限があるとそれが他の部位へ影響します。
そのため、ケガをしている部位に関わらず、制限が大きいところから重点的にコンディショニングを行いましょう。
セルフチェックで制限が大きかった部位から重点的にエクササイズをしていきます。
エクササイズは毎日~最低でも2日に1回は行いましょう。
練習前やお風呂上りなどに行うとより効果的です。
定期的にメニューを実施し、2-3週間後に再度セルフチェックをして改善しているか確認しましょう。
※セルフチェックはコンディショニングの方向性を示すもので、診断をするものではありません。日常生活に影響するような痛みや痛みでスポーツ動作ができない場合は、医療機関を受診してください。
※コンディショニングエクササイズはセルフチェックで判明した可動域制限を改善するためのものであり、ケガの治療を行うものではありません。もし痛みがある場合は患部の治療を受けるようにしてください。
また、ケガをしている部分に痛みが生じる場合はエクササイズを中止しましょう。痛みは脳からの危険信号ですので、痛みがある状態で動作を続けても身体にとって良い結果が得られることは稀です。