カラダとケガについて
骨盤・股関節の解剖学
Anatomy of the pelvis & hipjointMcDavid
SPORTMED LABO

骨盤・股関節とは

股関節は下肢と骨盤を結ぶ高い可動域を持つ球関節であり、体幹と下半身の力の伝達および吸収を促し、特に荷重位においては動的な安定性にも関与する関節です。また骨盤は脊柱にある仙骨と仙腸関節を形成して体幹部と連結し、左右の骨盤は恥骨結合として関節を形成することで連結します。

股関節はその役割から大きな力を生み出すことや安定性を生み出す必要があるため、強固な靭帯や大きな筋肉に覆われています。

骨盤剥離骨折やグロインペイン(鼠径部周辺部痛)などが股関節の有名なケガです。ただし、様々な要因が関わる関節のため症状が多岐に渡り、原因も複数あることが多く対応が難しいことがあります。

関節の動き

股関節は高い自由度を持つ球関節です。また可動域も高い関節として知られています。股関節で起こる運動は屈曲/伸展、内転/外転、内旋/外旋があります。
骨盤では脊柱や股関節との複合運動で前傾/後傾、側傾(挙上/下制)、回旋が起こります。

また仙腸関節は従来は不動関節(動かない関節)と考えられていましたが、近年では骨盤の動きや脊柱の動きに連動してわずかに動くと言われています。同様に左右の骨盤を繋ぐ恥骨結合でも股関節と骨盤の動きに連動しごくわずかに動きます。

正常関節可動域 (日本整形外科学会より引用)

【股関節】
屈曲・・・125°
伸展・・・15°
外転・・・45°
内転・・・20°
外旋・・・45°
内旋・・・45°

股関節は大腿骨と骨盤で形成されます。骨盤はさらに2つの寛骨と仙骨および尾骨で形成され、寛骨は腸骨、坐骨、恥骨で形成されます。

腸骨、坐骨、恥骨は成長に伴い癒合して1つの寛骨となります。腸骨は仙骨と仙腸関節を形成し、恥骨は恥骨結合として関節を形成します。

骨盤の骨格は多くの股関節周囲の筋肉の付着部となっています。特に腸骨の前後にある上前腸骨棘(ASIS)や上後腸骨棘(PSIS)、その間にある腸骨稜は主要な筋肉の付着部となっています。

靭帯・軟部組織

股関節は高い可動域があると同時に安定性も必要となる関節のため、強靭な靭帯、関節唇、関節包によってサポートされています。

主な靭帯として、腸骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯があります。腸骨大腿靭帯と恥骨大腿靭帯は股関節の前面を覆い、坐骨大腿靭帯は後面を覆うことで股関節をサポートします。腸骨大腿靭帯は非常に分厚く強靭であり、その形状から「Y靭帯」とも呼ばれます。

関節唇は骨盤のくぼみ(寛骨臼)にある吸盤のようなものであり、大腿骨が骨盤のくぼみに安定してはまり込むようになっています。

さらに股関節全体は袋状の関節包と呼ばれる組織によって覆われ、周囲の靭帯と同様に股関節をサポートします。

また仙腸関節はあまり多く動きませんが、主に前仙腸靭帯、骨間靭帯、長・短後仙腸靭帯によってサポートされています。

筋肉

股関節・骨盤に付着している筋肉は主に股関節の運動に作用します。また腰部の関節や股関節に作用する筋肉もあります。立つ、歩く、跳ぶ、蹴るなど様々な動作で使われる筋肉が多く存在します。

※下記で紹介している筋肉以外にも膝関節や大腿部で紹介している大腿四頭筋、ハムストリングス、内転筋群なども股関節・骨盤に付着しています。

腸腰筋
骨盤前面深層部に位置する腸骨筋、大腰筋、小腰筋の総称です。主に脚を付け根から前に振る動作(股関節屈曲)を行います。また脚を固定した状態から上体を曲げる(股関節屈曲)動作も行います。
歩行や走行の際に非常に重要な筋肉の1つです。

大腿筋膜張筋
股関節外側から太もも外側に位置し、腸脛靭帯に繋がる筋肉です。主に太ももを外側に振る(股関節外転)動作を行います。また歩行や走行時に脚を前方へ振る(股関節屈曲)動作で、股関節が外に回る(股関節外旋)を防ぎ、脚の向きを調整する役割もあります。

中殿筋
臀部にある筋肉の1つで大殿筋の上部に位置します。主に太ももを外側に振る(股関節外転)動作を行います。また股関節を外・内に回す(股関節外・内旋)動作にも作用します。
日常生活における歩行時の股関節・骨盤の左右方向へのブレの制御やスポーツにおけるサイドステップなどの横の動きに非常に重要な筋肉となります。

大殿筋
単一筋としては人体の中で最大な臀部を形成する筋肉です。主に太ももを後ろに振る(股関節伸展)動作を行います。また股関節を外に回す(股関節外旋)動作にも作用します。
歩行や走行において重要な筋肉の1つです。

深層外旋六筋
股関節深層部に位置する梨状筋、上双子筋、内閉鎖筋、下双子筋、大腿方形筋、外閉鎖筋の総称です。主に股関節を外に回す(股関節外旋)を行います。