大腿部は一般的に『ふともも(太もも)』と呼ばれ、股関節と膝関節の間の部位を指します。大腿部には体重を支えるための人体で最も長く強い大腿骨が存在します。また歩行や走行の時に大きな力を生み出すことが必要なため、多くの筋肉も存在します。
大腿部にある筋肉は膝関節と股関節の運動に作用し、ダッシュ・ジャンプ・キックなどの動作において肉離れ(筋挫傷)が起こりやすくなります。またサッカーやラグビーなど接触が多いスポーツでは打撲(挫滅創)が多く起こる部位です。
大腿部に深く関係する関節は股関節と膝関節であり、大腿部にある筋肉はそれぞれの関節の運動に作用します。
股関節で起こる運動は屈曲/伸展・内転/外転・内旋・外旋です。また膝関節で起こる運動は屈曲・伸展です。
そのため大腿部(特に筋肉)は股関節および膝関節の動きの影響を大きく受ける部位と言えます。
【股関節】
屈曲・・・125°
伸展・・・15°
内転・・・20°
外転・・・45°
内旋・・・45°
外旋・・・45°
【膝関節】
屈曲・・・130°
伸展・・・0°
大腿部には大腿骨と呼ばれる人体で最も長く強い骨があります。大腿骨は非常に頑丈な骨のため骨折が起こることは多くはありませんが、起こった場合は強力な外力が加わっていることが多いため、重症となる場合が多いです。
また大腿骨には股関節や膝関節に作用する筋肉が多く付着しています。
前面
大腿部の前面には大腿四頭筋と呼ばれる大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋があります。これらの筋肉は膝蓋腱を通して脛骨に付着し、主に膝関節を伸展させます。
また大腿直筋のみ骨盤にも付着しており、特に膝の屈曲時に股関節を屈曲させる筋肉としても機能します。ジャンプや立ち上がる時などに大きな力を発揮し、また方向転換、ジャンプの着地、ストップ時などの減速にも大きく関与します。
大腿四頭筋は主にハムストリングスと共に、膝の前後の動きに関与する筋肉群と言えます。
後面
大腿部後面にはハムストリングスと呼ばれる大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋があります。
これらの筋肉は骨盤にある坐骨から始まり半膜様筋と半腱様筋は膝内側(脛骨)に付着し、大腿二頭筋は膝外側(腓骨)に付着しています。主に膝関節を屈曲させ、股関節を伸展させます。
また屈曲時には膝を捻じる動き(回旋)に関与します。
ランニングやスプリントの際の加速に大きく関与するため「ランニング筋」として知られています。また同時にランニングやスプリントの際の前に振り上げた脚や後ろに蹴り上げた脚の減速する筋肉としても機能します。
ハムストリングスは主に大腿四頭筋と共に、膝の前後の動きに関与する筋肉群と言えます。
内側
大腿部には内側には股関節の内転をする筋肉があり、一般的に内転筋(群)と呼ばれています。
内転筋には恥骨筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋、薄筋と呼ばれる筋肉が含まれます。恥骨筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋は骨盤から大腿骨にかけて付着しており股関節にのみ関与しますが、薄筋は骨盤から膝内側(脛骨)にかけて付着しており、膝の運動(屈曲)にも関与します。
内転筋は主に殿筋と共に、股関節の左右の動きに関与する筋肉群と言えます。そして、股関節の左右の動きは膝の横ブレ(内反・外反)や捻じれ(回旋)へも影響を及ぼすため、結果的に膝関節の左右や回旋の動きにも影響を与えます。
また、膝の横ブレ(左右の動き)や捻じれ(回旋)を制御することで膝の前後の安定性にも影響を与えます。
外側
大腿部の外側には腸脛靭帯と呼ばれる靭帯があります。この靭帯は殿筋(大殿筋と大腿筋膜張筋)から始まり膝外側(脛骨)に繋がっています。大腿部の外側はこの靭帯が大部分を占め、筋肉は多く存在しません。
臀部にある大腿筋膜張筋、小殿筋、中殿筋が股関節を外転させます。これらの筋肉は主に内転筋と共に、股関節の左右の動きに関与する筋肉群と言えます。
そして、内転筋と同様に股関節の左右の動きは膝の横ブレ(内反・外反)や捻じれ(回旋)へも影響を及ぼすため、結果的に膝関節の左右や回旋の動きにも影響を与えます。また、膝の横ブレ(左右の動き)や捻じれ(回旋)を制御することで膝の前後の安定性にも影響を与えます。