野球におけるコンディショニングでは、野球の動きの特性を理解し、
適切なエクササイズを行い、身体状態をより良く調整することが重要です。
身体を正常な状態に維持することでケガの予防につながり、
結果的にパフォーマンスの向上にも繋がります。
1.地面からの反力を下半身、体幹、上半身と力を伝達しパフォーマンスを発揮する全身運動。
2.身体を捻る動作が多く、スムーズに力を伝達するのが難しい。
3.繰り返し動作が多く、疲労蓄積によるケガが発生しやすい。
4.左右非対称で、身体の右と左で別々の動きが起こる。
野球で起こりやすいヒジのケガは野球肘と呼ばれ、投球動作の繰り返しにより起こります。野球肘にも様々な種類がありますが、多くはヒジの痛み、腫れ、可動域の制限が起こり、投球が困難となります。投球過多が原因となることが多いですが、根本の原因がヒジにあることは少なく、多くの場合は肩、体幹、股関節などに機能低下が起き、その結果としてヒジに大きな負担がかかりケガが発症します。この根本となる原因を解決せずにヒジの痛みがなくなったからと言って競技に復帰すると再発するリスクが非常に高くなります。
野球における投球動作では身体を捻じる(回旋)ことでより強い力の伝達を行いますが、肩の捻じれ(内旋・外旋)による負担が増えケガに繋がることが多いです。原因は様々ですが、下半身や体幹の捻じれが不足していることにより、肩による捻じれが代償し負担が過剰になることがあります。肩には腱板、靭帯、関節唇、軟骨など多くの組織があり、それらが度重なる負荷により損傷します。多くの場合、投球時の痛み、不安定性、可動域制限が起こります。投球過多は肩へ直接的な過度な負担を与えるだけでなく、下半身や体幹への疲労を増やし、捻じれ(回旋)の不足を招き、肩への負担をさらに増大させます。
バッティング時の捻じる(回旋)動作や守備の際のかがむ動作など、腰に負担がかかりやすい動作を繰り返すことで腰の痛みを発症します。多くは腰そのものが原因ではなく、股関節や首の動きが悪くなり、腰の部分で正常な動きができなくなることにより、腰に負担がかかることで起こります。そのため、その原因を解決できていないことが多く、腰痛は繰り返すことが多いケガの一つです。症状としては、前屈や後屈時の痛みや可動域制限が起こり、ケガによっては下肢へ広がる痛みやしびれなども起こります。
野球では比較的ケガが起こりにくい部位ですが、股関節の機能を正常に保つことは他の部位のケガを予防する上で非常に重要となります。股関節のケガは主にランニングやスプリント動作の繰り返しにより起こることが多く、ピッチングやバッティングで起こることは比較的少ないです。症状としては、動作時痛や可動域制限が起こります。
鼠径部痛症候群/グロインペイン
ここでは身体の状態を知るヒントとなるセルフチェックを紹介します。
まずは自分の身体の状態を把握し、それに合ったコンディショニングを行いましょう。
このセルフチェックでは自動可動域(自ら運動を行った時の関節の可動範囲)をチェックします。
野球は全身運動のため、身体のどこかで制限があるとそれが他の部位へ影響します。そのため、ケガをしている部位に関わらず、制限
が大きいところから重点的にコンディショニングを行いましょう。
セルフチェックで制限が大きかった部位から重点的にエクササイズをしていきます。
エクササイズは毎日~最低でも2日に1回は行いましょう。
練習前やお風呂上りなどに行うとより効果的です。
定期的にメニューを実施し、2-3週間後に再度セルフチェックをして改善しているか確認しましょう。
※セルフチェックはコンディショニングの方向性を示すもので、診断をするものではありません。日常生活に影響するような痛みや痛みでスポーツ動作ができない場合は、医療機関を受診してください。
※コンディショニングエクササイズはセルフチェックで判明した可動域制限を改善するためのものであり、ケガの治療を行うものではありません。もし痛みがある場合は患部の治療を受けるようにしてください。
また、ケガをしている部分に痛みが生じる場合はエクササイズを中止しましょう。痛みは脳からの危険信号ですので、痛みがある状態で動作を続けても身体にとって良い結果が得られることは稀です。